べき級数について #
\(\)べき級数の収束半径,べき級数の様々な演算に関して解説する. また,正則関数のべき級数展開について解説する.
冪級数とは。 \(\alpha\in\mathbb{C}\)に対し、\(\alpha\)を中心とする冪級数とは、複素数列\(a_n\in\mathbb{C}\)を用いて定まる $$ \sum_{n=0}^\infty a_n(z-\alpha)^n $$ のことをいう。
収束について。 正確には、\(\lim_{N\to\infty}\sum_{n=0}^Na_n(z-\alpha)^n\)である。 これが収束するとき、冪級数が\(z\)で収束するという。
全ての自然数\(n\)に対して\(a_n=1\)とすることで定まる $$ \sum_{n=0}^\infty z^n=1+z+z^2+\cdots $$ は\(0\)を中心とした冪級数。
これは\(\lvert z\rvert<1\)の範囲で収束し、その極限値は\(\dfrac{1}{1-z}\)である。
冪級数の和や積について。
\(\sum_na_nz^n, \sum_nb_nz^n\)が収束するならば、\(\sum_n(a_n+b_n)z^n, \sum_nca_nz^n\)が収束する。 積は\(\sum_n(\sum_ka_{n-k}b_k)z^n\)が収束する?
冪級数 $$ \sum_{n=0}^\infty a_nz^n $$ が絶対収束するとは、 $$ \sum_{n=0}^\infty\lvert a_n\rvert\lvert z\rvert^n $$ が収束することをいう。
冪級数が絶対収束するなら収束する。
冪級数 $$ \sum_{n=0}^\infty a_nz^n $$ が絶対収束すると仮定する。 つまり、 $$ \sum_{n=0}^\infty \lvert a_n\rvert \lvert z\rvert^n $$ が収束すると仮定する。
このとき、三角不等式より $$ \lvert \sum_{k=n}^ma_kz^k \rvert \leq \sum_{k=n}^nm\lvert a_k\rvert \lvert z\rvert^k $$ である。 絶対収束することから、この右辺はいくらでも小さくすることができる。 より正確には、任意の\(\epsilon >0)\に対し、ある自然数\(N)\が存在し、\(n, m\geq N)\ならば $$ \sum_{k=n}^nm\lvert a_k\rvert \lvert z\rvert^k <\epsilon $$ となる。
このことから、部分和\(s_n=\sum_{k=0}^na_kz^k)\がコーシー列であることがわかる。 \(\mathbb{C})\は完備なので、\(s_n)\は収束する。
冪級数の収束半径 #
冪級数の収束については次のことがわかる。
べき級数の収束半径。 \(\sum_n\lvert a_n\rvert \lvert z\rvert^n\)が収束する\(\lvert z\rvert\)の上限を\(R\)とする。 これが収束半径。 \(\lvert z\rvert<R\)で絶対収束し、\(\lvert z\rvert>R\)で発散する。 \(\lvert z\rvert=R\)においてはさまざまな可能性がある。
冪級数の収束半径を計算する方法として代表的なものが以下の二つ。
\(\sum_{n=0}^\infty a_nz^n\)の収束半径\(R\)は $$ \limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{\lvert a_n\rvert}=\frac{1}{R} $$ を満たす。
以下の極限が存在すれば等式が成立する。 $$ \lim_{n\to\infty}\frac{\lvert a_{n+1}\rvert}{\lvert a_n\rvert}=\frac{1}{R} $$
$$ \sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n}z^n\\ \sum_{n=0}^\infty nz^n\\ \sum_{n=0}^\infty 8^nz^{3n}\\ \sum_{n=0}^\infty 3^nz^{2n}\\ \sum_{n=0}^\infty \frac{(2n)!}{(n!)^2}z^n $$
広義一様収束 #
さらに、\(z)\に関して広義一様収束することも証明できる。
広義一様収束は極限の交換を行うための一つの十分条件である。 これを用いて冪級数の項別微分や項別積分を正当化できる。
任意の\(\epsilon>0)\に対し、ある自然数\(N)\と実数\(K)\が存在し、 任意の自然数\(n\geq N)\と任意の複素数\(z)\で\(\lvert z\rvert < K)\なるものに対し、 $$ \lvert \sum_{k=0}^na_kz^k-f(z)\rvert < \epsilon $$ が成り立つ。
一様収束は一様ノルムについての収束で、一様ノルムについてのコーシー列であることから一様ノルムについての収束を導くことができる。 まず、冪級数の部分和を\(s_n(z)=\sum_{k=0}^na_nz^n)\としよう。 これについて、 $$ \sup_z\lvert s_n(z)-s_m(z)\rvert=\sup_z\lvert \sum_{k=n}^ma_kz^k\rvert\leq\sup_z\sum_{k=n}^m\lvert a_k\rvert\lvert z\rvert^k $$ が成り立つ。 \(\lvert z_k\rvert)\が\(0)\以上の実数なので、最右辺の\(\sup)\は\(\lvert z\rvert)\が最大となる\(z)\でとる。 これが収束半径の中なら、\(n, m\to\infty)\で\(0)\に収束することがいえて、\(s_n)\が一様ノルムについてのコーシー列であることがわかる。 各点収束先を\(s(z))\とする。 任意の\(\epsilon>0)\に対しある自然数\(N)\が存在して\(n, m>N)\と\(z)\に対して $$ \lvert s_n(z)-s_m(z)\rvert < \epsilon $$ となる。 この式で、\(n\to\infty)\の極限をとると、 $$ \lvert s(z)-s_m(z)\rvert \leq \epsilon $$ となり、一様収束することがわかる。
この議論は次のように一般化できる。 (ワイエルシュトラスの\(M)\テスト)
関数列\(f_n)\に対し、正の実数列\(M_n)\であって、\(\lVert f_n\rVert\leq M_n)\かつ\(\sum_nM_n)\がが収束するものがあれば、\(f_n)\は一様収束する。 \(f_n)\の部分和についてコーシー列であることが\(M_n)\を用いた評価で証明できる。
項別微分可能性については一様収束に関する議論を行わず直接証明することもできる。
冪級数の項別微分と項別積分 #
冪級数により定まる関数(関数の冪級数展開)について、その微分や積分は容易に計算できる。 極限の順序交換について議論する必要がある。 特に、関数が冪級数展開できる場合、何回でも微分可能である。
冪級数により定まる関数\(f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_nz^n\)の収束半径が\(R>0\)であるとする。 このとき、収束円板上で連続であり、正則で、 $$ f'(z)=\sum_{n=0}^\infty na_nz^{n-1}=\sum_{n=0}^\infty(n+1)a_{n+1}z^n $$ が成り立ち、これも同じく収束半径\(R\)である。
$$ \lvert f(z)-f(a)\rvert\leq \sum_{n=0}^\infty\lvert a_n\rvert\lvert z^n-a^n\rvert\\ \leq\lvert z-a\rvert\sum_{n=0}^\infty n\lvert a_n\rvert r^{n-1} $$ より連続。
$$ \frac{f(z)-f(a)}{z-a}=\sum_{n=1}^\infty a_n(z^{n-1}+\cdots+a^n) $$ とおくと、これは収束し、連続である。
特に収束冪級数は解析的である。 \(f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_n(z-\alpha)^n\)とすると、\(a_n=\dfrac{1}{n!}f^{(n)}(\alpha)\)である。
冪級数で定まる関数の一致の定理 #
\(z=0)\を中心とする収束冪級数により定まる関数\(f(z)=\sum_na_nz^n)\を考える。 これについて、\(f(0)=0)\である。 一方で、もしある\(n)\について\(a_n\neq0)\であれば、ある正の実数\(r)\が存在して、\(0<\lvert z\rvert &\lt; r)\において\(f(z)\neq 0)\である。 対偶を取れば、\(f(z))\が\(z=0)\のある近傍で恒等的に\(0)\であれば任意の\(n)\について\(a_n=0)\である。
このことから、\(f(z))\が恒等的に\(0)\でなければその零点は孤立することがわかる。 対偶を取れば、\(f)\の零点の集合が集積点を持つならば\(f)\は恒等的に\(0)\になる。 これを利用して一致の定理を証明することができる。
一致の定理 #
局所的に$0$なこと(より弱く$0$点の集積点であること)と微分係数が全て$0$であることが同値である。
微分係数が$0$から局所的に$0$なのはよい。 逆は、もし$0$でない微分係数があれば、という議論をすればいい。
全ての微分係数が$0$になるという条件は開かつ閉である。
閉なことは導関数の連続性から。 開なことは、もし$a$で上の条件を満たすなら、$a$でのテイラー展開を考えることでその収束円板上でも局所的に$0$であることが言えて、 その点におけるテイラー展開の係数が全て$0$なことが言える。
実際に$0$点が集積点を持つならば、上記の集合が空でないことが言えて、 連結性から全体と一致する。
正則関数の冪級数展開 #
正則関数はその定義域の各点についてその点を中心として冪級数展開できる。 特に何回でも微分可能である。 さらに上で述べたように一致の定理も成り立つ。
初等関数のべき級数展開 #
最初にロピタルの公式を述べた後,べき級数の例として初等関数のべき級数展開を紹介し,最後に解析接続の原理である一致の定理について解説する.
ロピタルの公式 \(f(z), g(z)\)が\(z=\alpha\)で解析的で、\(n=0,\ldots,m-1\)で\(f^{(n)}(\alpha)=g^{(n)}(\alpha)=0\)とする。 このとき、\(g^{(m)}(\alpha)\neq0\)であれば $$ \lim_{z\to\alpha}\frac{f(z)}{g(z)}=\lim_{z\to\alpha}\frac{f^{(m)}(\alpha)}{g^{(m)}(\alpha)} $$ が成り立つ。
$$ \lim_{z\to e^{2\pi i/n}}\frac{z-e^{2\pi i/n}}{z^n-1} $$
$$ \lim_{z\to 0}\frac{e^z-\cos z-z}{z^2} $$
$$ \lim_{z\to i}\frac{\cosh(\pi z/2)}{\Log(-iz)} $$
指数関数\(f(z)=e^z\)の冪級数展開。 $$ e^z= \sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n!}z^n $$ である。 収束半径は\(\infty\)である。
対数関数の主値、\(f(z)=Log(1+z)\)の冪級数展開。 $$ Log(1+z)=\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n}z^n $$ 収束半径は\(1\)
冪函数\(f(z)=(1+z)^\alpha\)の冪級数展開。 $$ (1+z)^\alpha=\sum_{n=0}^\infty\binom{\alpha}{n}z^n $$ ここで、\(\binom{\alpha}{n}\)は一般化二項係数で、 $$ \binom{\alpha}{n}=\frac{\alpha(\alpha-1)\cdots(\alpha-n+1)}{n!} $$ で定まるもの。
冪級数の和、積、合成
\(f(z)=e^{2z}\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=\dfrac{1}{z^2+1}\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=\dfrac{1}{z+1}\)を\(z=1\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=\cos z=\dfrac{e^{iz}+e^{-iz}}{2}\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=\dfrac{1}{z^2-3z+2}\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=z^2\cos z^2\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。 \(f(z)=(1+z)e^z\)を\(z=0\)の周りで冪級数展開して、収束半径を求める。
項別微積分を用いて冪級数展開を計算する。 \((\log(1+z))'=\frac{1}{1+z}\)を用いて\(z=0\)中心の\(\log(1+z)\)の冪級数展開と収束半径を求める。 \((\cos z)'=-\sin z\)を用いて\(z=0\)中心の\(\sin z\)の冪級数展開と収束半径を求める。 \(z=0\)中心の\(\dfrac{1}{(1-z)^3}\)の冪級数展開と収束半径を求める。 \(\dfrac{1}{\cos z}\)を\(z=0\)中心に冪級数展開し、収束半径を求める。 \(\tan z\)を\(z=0\)中心に冪級数展開し、収束半径を求める。 \(\dfrac{1}{1-\sin z}\)を\(z=0\)中心に冪級数展開し、収束半径を求める。
一致の定理と解析接続 #
ここでは正則関数の解析接続という概念を紹介する。 まずは、正則関数がテイラー展開できるという事実を証明抜きで紹介しよう。
\(f\)は領域\(\Omega\)で正則とする。 このとき、\(a\in\Omega\)に対し、ある\(\Omega\)で正則な関数\(f_n(z)\)が存在して $$ f(z)=f(a)+f'(a)(z-a)+\frac{f^{(2)}(a)}{2!}(z-a)^2+\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(z-a)^{n-1}+f_n(z)(z-a)^n $$ となる。
さらに、\(z=a\)を中心とする十分小さな円周\(C\)に対し $$ f_n(z)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(\zeta)}{(\zeta-a)^n(\zeta-z)}d\zeta $$ となる。
この事実を用いると次のことが証明できる。
\(\Omega\)で正則な関数\(f(z)\)について、 \(z=a\)で微分係数が全て\(0\)だとすると\(f(z)\)は恒等的に\(0\)である。
まず、ある円\(C\)の内部で\(f\)が恒等的に\(0\)であることを示す。 微分係数が全て\(0\)であるとすると、任意の\(n\)に対しある正則関数\(f_n(z)\)が存在して $$ f(z)=f_n(z)(z-a)^n $$ となる。 この円\(C\)及びその内部における\(\lvert f(z) \rvert\)の最大値を\(M\)とし、\(C\)の半径を\(R\)とすると、 上の定理の剰余項の表示から $$ \lvert f_n(z) \rvert\leq\frac{M}{R^{n-1}(R-\lvert z-a \rvert)} $$ となる。 よって $$ \lvert f(z) \rvert\leq(\frac{\lvert z-a \rvert}{R})^n\frac{MR}{R-\lvert z-a \rvert} $$ となる。 ここで、\(\lvert z-a \rvert<R\)となるので、\(n\to\infty\)で右辺は\(0\)に収束するから\(f(z)=0\)となる。
さて\(\Omega\)全体で\(f\)が恒等的に\(0\)であることを示す。 \(E_1\subset\Omega\)を\(f\)及びその導関数が全て\(0\)になる点のなす集合とする。 上で見たことより、\(E_1\)は開集合である。 一方で、\(E_1\)は閉集合でもある。 \(\Omega\)が連結で\(E_1\)は空でないので\(\Omega=E_1\)となる。
上の定理の対偶で\(f\)が恒等的に\(0\)という関数でなければ、微分係数が\(0\)でない\(k\)が存在する。 このことから\(f\)の零点は孤立することがわかる。 特に次の事実が成り立つ。
\(f(\alpha)=0\)とし、\(f(z)=\sum_{n=0}^\infty a_n(z-\alpha)^n\)とおく。 ある\(n_0\)で\(a_{n_0}\neq0\)かつ\(n< n_0\)ならば\(a_n=0\)であるとする。 このとき、 $$ f(z)=(z-\alpha)^{n_0}\sum_{n=0}^\infty a_{n_0+n}(z-\alpha)^n $$ となる。 \(b_n=a_{n_0+n}\)とおき、\(g(z)=\sum_{n=0}^\infty a_{n_0+n}(z-\alpha)^n\)とおく。 \(b_0\neq0\)なので、\(g(\alpha)=b_0\neq0\)である。 よって、ある\(\epsilon\)で\(\lvert z-\alpha\rvert <\epsilon\)ならば\(g(z)\neq0\)となるようなものが取れる。 この範囲においては\(f(z)\neq0\)でもある。
集積点とは。 孤立点でないこと。 \(z=\alpha\)が零点の集積点であるとは(\(f(\alpha)\neq0\)でもよい?) 任意の\(\epsilon\)に対してある\(z\in\mathbb{C}\)で\(0<\lvert z-\alpha\rvert<\epsilon\)かつ\(f(z)=0\)となるものが存在すること。
\(f(z), g(z)\)を領域\(D\)で正則な関数で、\(D\)内に集積点を持つ集合の上で\(f(z)=g(z)\)とする。 このとき、\(D\)上で\(f(z)=g(z)\)である。
\(f-g\)に対して上の定理を用いればよい。
領域\(D\)上の「解析関数」\(f, g\)があり、\(D\)内のある点\(\alpha\)において、\(f(\alpha)=g(\alpha)\)であるとする。 さらに、\(\alpha\)のどんな近くにも(要するに集積点、収束する点列が取れる)\(f(z)=g(z)\)となる\(z\neq\alpha\)があるなら、 \(f\)と\(g\)は\(D\)全体で一致する。
解析接続 #
一致の定理を用いることで、正則関数の解析接続という概念を導入する。 領域\(\Omega_1\)で正則な関数\(f_1\)と領域\(\Omega_2\)で正則な関数\(f_2\)が、共通領域\(\Omega_1\cap \Omega_2\)において\(f_1=f_2\)であるとき、\(\Omega_1\cup\Omega_2\)における正則関数\(f\)であって、\(\Omega_1\)上では\(f_1\)に一致し、\(\Omega_2\)上では\(f_2\)に一致する関数が定まる。 このような条件を満たす\(f\)は、一致の定理からただ一つに定まる。 これを\(f_1\)(あるいは\(f_2\))の\(\Omega_1\cup \Omega_2\)への解析接続という。
上の一意性は単に\(f\)が連続関数であったり実関数としての\(C^\infty\)級という条件では成り立たない。 つまり正則関数に特有の性質であることに注意しよう。
共通部分\(\Omega_1\cap\Omega_2\)が連結でない場合、その複数の連結成分において同時に\(f_1=f_2\)が成り立つとは限らない。 このような例は後で紹介する。
ベキ級数 $$ f(z)=1+z+z^2+\cdots $$ は\(\lvert z \rvert<1\)で絶対収束し正則関数を定める。
この範囲で、等比数列の和の公式から $$ f(z)=\frac{1}{1-z} $$ となる。
この右辺の式は\(z\neq1\)で正則関数を定める。
ガンマ関数 #
実部が\(Re(s)>0\)なる複素数\(s\)に対し $$ \int^\infty_0e^{-t}t^{s-1}dt $$ をガンマ関数と呼ぶ。 この積分は収束し、正則関数を定める。
部分積分により、上と同じ範囲の複素数\(s\)に対して $$ \Gamma(s+1)=s\Gamma(s) $$ が成り立つ。
そこで、実部が\(-1\)より大きな複素数\(s\)に対し $$ G(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s} $$ と定義しよう。 \(s+1\)の実部は\(0\)より大きいので、これの右辺は有理形関数で\(s=0\)で一位の極を持ちそれ以外では正則である。 さらに、その留数は\(\Gamma(1)=1\)である。
この\(G(s)\)について、\(\Re(s)>0\)においては $$ G(s)=\frac{\Gamma(s+1)}{s}=\Gamma(s) $$ が成り立つ。 つまり、\(G(s)\)は\(\Gamma(s)\)を\(\Re(s)>-1\)に解析接続した関数となっている。
これを繰り返すことで、\(\Gamma(s)\)は全複素平面に有理形関数に解析接続でき、 \(s=0,-1,-2,\ldots\)に\(1\)位の極を持つ以外では正則である。 また、極\(s=-n\)における留数は\(\dfrac{(-1)^n}{n!}\)であることがわかる。
このガンマ関数は、前に留数定理を用いて示したように $$ \Gamma(s)\Gamma(1-s)=\frac{\pi}{\sin\pi s} $$ をみたす。