ローラン級数

ローラン級数展開 #

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ローラン級数展開について。 正則関数は冪級数展開可能であった。 孤立特異点の周りでローラン級数展開可能であることを確かめる。 孤立特異点におけるローラン展開,極と真性特異点について解説する.

孤立特異点 #

複素関数\(f\)が\(z=\alpha\)の周りで\(\alpha\)を除いて定義されかつ正則、 つまりある正の数\(R\)が存在して\(0 < \lvert z-\alpha \rvert < R\)上で\(f\)が正則なとき、 \(\alpha\)を\(f\)の孤立特異点という。

関数\(f\)が\(z=a\)の近傍で\(z=a\)を除いて正則であるとする。 つまり、ある\(\delta\)について\(0<\lvert z-a \rvert<\delta\)で\(f(z)\)が正則であるとする。 このとき、\(z=a\)を\(f(z)\)の孤立特異点という。

孤立特異点の例を見ていく。

\(f(z)=\dfrac{1}{z}, f(z)=\dfrac{1}{\sin z}\)
\(f(z)=\log z\)の\(z=0\)は孤立特異点ではない。
\(f(z)\)が正則な点も孤立特異点である。

ローラン級数展開 #

\(z=a\)を\(f(z)\)の孤立特異点としよう。 このとき、\(f\)は\(z=a\)の周りでローラン展開 $$ f(z)=\sum_{n=-\infty}^\infty a_n(z-a)^n $$ を持つ。 ローラン級数展開の係数\(a_n\)は積分表示を持つ。

特に負冪部分 $$ \sum_{n=-\infty}^{-1} a_n(z-a)^n $$ を主要部という。

\(f\)が\(z=\alpha\)を孤立特異点に持つとする。 \(\alpha\)を中心とする同心円\(C_1, C_2\)を考え、半径の小さい方を\(C_1\)とする。 \(C_1, C_2\)に挟まれた部分にある点\(z\)をとる。 円の向きはいずれも反時計回り。 \(z\)を中心とする小さな円を\(C\)とすると、コーシーの積分定理より $$ f(z)=\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta $$ であり、一方で\(f\)の正則性から積分路を連続変形して\(\int_C=-\int_{C_1}+\int_{C_2}\)であるから、 $$ f(z)=-\frac{1}{2\pi i}\int_{C_1}\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta+\frac{1}{2\pi i}\int_{C_2}\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta $$ となる。

$$ \dfrac{1}{\zeta-z}=\dfrac{1}{\zeta-\alpha-z+\alpha}=\dfrac{1}{(\zeta-\alpha)-(z-\alpha)} $$ となる。 ここで、\(\zeta\in C_2\)であれば\(\lvert z-\alpha\rvert<\lvert \zeta-\alpha\rvert\)であるから、 $$ \dfrac{1}{(\zeta-\alpha)-(z-\alpha)}=\dfrac{1}{\zeta-\alpha}\dfrac{1}{1-(z-\alpha)/(\zeta-\alpha)}\\ =\dfrac{1}{\zeta-\alpha}\sum_{n=0}^\infty(\dfrac{z-\alpha}{\zeta-\alpha})^n $$ が収束する。 一方で、\(\zeta\in C_1\)であれば\(\lvert z-\alpha\rvert>\lvert \zeta-\alpha\rvert\)であるから、 $$ \dfrac{1}{(\zeta-\alpha)-(z-\alpha)}=-\dfrac{1}{z-\alpha}\dfrac{1}{1-(\zeta-\alpha)/(z-\alpha)}\\ =\dfrac{1}{z-\alpha}\sum_{n=0}^\infty(\dfrac{\zeta-\alpha}{z-\alpha})^n $$ が収束する。

以上から、 $$ f(z)=-\frac{1}{2\pi i}\int_{C_1}\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta+\frac{1}{2\pi i}\int_{C_2}\frac{f(\zeta)}{\zeta-z}d\zeta\\ =\frac{1}{2\pi i}\int_{C_1}\frac{1}{\zeta-\alpha}\sum_{n=1}^\infty(\frac{\zeta-\alpha}{z-\alpha})^nf(\zeta)d\zeta+ \frac{1}{2\pi i}\int_{C_2}\frac{1}{\zeta-\alpha}\sum_{n=0}^\infty(\frac{z-\alpha}{\zeta-\alpha})^nf(\zeta)d\zeta\\ =\frac{1}{2\pi i}\sum_{n=1}^\infty(\int_{C_1}(\zeta-\alpha)^{-n}f(\zeta)d\zeta)(z-\alpha)^{-n} +\frac{1}{2\pi i}\sum_{n=0}^\infty(\int_{C_2}(\zeta-\alpha)^{-(n+1)}f(\zeta)d\zeta)(z-\alpha)^{n} $$ となる。 これは\(z\)によらないから、\(C_1, C_2\)の半径を動かすことができ、 $$ f(z)=\sum_{n=-\infty}^\infty(\frac{1}{2\pi i}\int_{\lvert z-\alpha\rvert=r}\frac{f(\zeta)}{(\zeta-\alpha)^{n+1}}d\zeta)(z-\alpha)^n $$ となる。

以下は\(z=0\)中心の展開を考える。 $$ f(z)=\dfrac{3z^3+2z^2+z-1}{z^2}=-z^{-2}+z^{-1}+2+3z $$ で、\(z=0\)は\(2\)位の極で留数\(1\)である。

$$ f(z)=e^{1/z}=\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n!}z^{-n} $$ であり、真性特異点。

$$ f(z)=\dfrac{e^z}{z^4}=z^{-4}+z^{-3}+\frac{1}{2}z^{-2}+\frac{1}{6}z^{-1}+\cdots $$ であり、\(4\)位の極、留数は\(\dfrac{1}{6}\)である。

$$ f(z)=\dfrac{1}{z^4+z^2}=z^{-2}\dfrac{1}{z^2+1}=z^{-2}(1-z^2+z^4+\cdots) $$ であり、\(2\)位の極、留数は\(0\)である。

$$ f(z)=\dfrac{e^z-1}{z}=1+\frac{1}{2}z+\cdots $$ であり、除去可能特異点。

孤立特異点の分類 #

孤立特異点を三種類に分類する。 これはローラン級数展開の主要部の様子によって、また同値だが特異点に近づくときの関数の振る舞いによっている。 除去可能特異点、極、真性特異点の三種類に分類する。

除去可能特異点は本質的には特異点ではないような孤立特異点で、その点まで正則に関数を延長できる。 極は特異性を持つが比較的扱いやすい。 真性特異点は扱いにくい特異点と言える。

主要部が\(0\)なとき除去可能特異点、有限和であれば極、無限和であれば真性特異点である。

\(z\to\alpha\)での振る舞い。 除去可能特異点なら有限値に収束、極なら\(\infty\)に発散、真性特異点なら近づき方によっていろんな値になる。

除去可能特異点 #

\(z=a\)が\(f(z)\)の孤立特異点であり、\(z=a\)を含めた領域で正則な函数\(g(z)\)が存在して、 \(z\neq a\)では\(f(z)=g(z)\)であるとき、\(z=a\)は除去可能特異点であるという。

要するに除去可能特異点は見かけ上特異点のようになっているが、実際のところ特異点ではないものである。

\(\dfrac{e^z-1}{z}, \dfrac{\sin z}{z}\)など。 \(z=0\)が除去可能特異点。

\(0<\lvert z-\alpha\rvert<\epsilon\)ならば\(\lvert f(z)\lvert\leq M\)となる\(\epsilon\)と\(M\)が存在することが同値。

除去可能特異点の周りでのローラン級数展開は主要部が\(0\)になる。

#

極に対してはローラン級数展開の係数について\(a_n\neq0\)となる最小の\(n\)が定まる。 \(-n\)を極の位数という。 \(\alpha\)で\(-n\)位の極をもつという。

\(z=a\)が\(f(z)\)の孤立特異点であり、\(\lim_{z\to a,z\neq a}f(z)=\infty\)であるとき、\(z=a\)を極という。

また、\(z=a\)が\(f(z)\)の極であるとき、ある整数\(n\)について\((z-a)^nf(z)\)は\(z=a\)まで正則な関数となる。 このような\(n\)で最小のものを\(z=a\)の極の位数という。

\(z=a\)が極の場合には主要部が有限和となる。

極の異なる定義。 主要部が\(0\)でなく、有限和なとき。 \(a_n\neq0\)なる最小の\(n\)について\(-n\)を位数といい、\(a_{-1}\)を留数という。 このとき、\(f(z)=\dfrac{g(z)}{(z-\alpha)^n}\)と正則な\(g(z)\)を用いてかけ、正則関数の日である。 逆に正則関数の比は分母が\(0\)になるところで極をもつ。

\(f(z)=\dfrac{1}{z(z-1)}\)は\(z=0\)で主要ぶが\(-z^{-1}\)で極

真性特異点 #

いずれでもない場合、真性特異点という。 \(e^{-1/x}\)とか\(\sin\dfrac{1}{z}\)とか? 主要ぶが無限話

\(\alpha\)が\(f\)の真性特異点のとき、 \(z\to\alpha\)をうまく近づけると\(f(z)\)をどんな値にも近づけられる。

\(f(z)=e^{1/z}\)とする。 \(z=1/(a+bi)\)とすると、\(f(z)=e^{2\pi(a+bi)}=e^a(\cos b+i\sin b)\)である。 よって、\(b\)を固定して

有理型関数 #

領域\(\Omega\)で極を除いて正則な関数を有理形関数という。
正則関数の比で表される関数は有理型関数である。
\(f(z)=\dfrac{z^2-3z+2}{z^2(z^2-1)}\)の孤立特異点(正則な点?)を求めよ。 単に正則な点と除去可能特異点の違いは? 約分をしない式で定義されていることがポイント。
\(\dfrac{1}{z^2(z-1)^2}\)は\(z=0, 1\)にそれぞれ\(2\)位の極。 ローラン級数展開を計算しよう。